PR

歌詞 対訳 解説 BWV 147 心と口と行いと生き方で カンタータ Herz und Mund und Tat und Leben

『心と口と行いと生き方で』 教会カンタータの中で最も有名な名曲かもしれない。

洗礼者ヨハネの誕生の祝日(6月24日) ザカリア
聖母マリア訪問の祝日(7月2日) マニフィカト
イエスを身ごもったマリアが老女エリサベトのところを訪れ、その祝福を受けて神を讃えるという情景。

補足いたしますと、エリサベトは洗礼者ヨハネの母。夫は司祭のザカリヤ。
この夫婦は子供に恵まれず、既に年を取っていて、もはや子供が生まれることなどあり得ないと思っていた。ところがある日、夫ザカリアが神殿で祭司の務めに当っていた時、天使ガブリエルが現れ、エリサベトが男の子を生むと告げられる。生まれた子が洗礼者ヨハネ。

マリアはエリサベトのいとこにあたる親戚。
同じく天使ガブリエルに告げられるマリア。神により、イエスを身ごもったマリアは出産前に、親戚のザカリア家に訪問し、エリサベトに挨拶に出向く。(三カ月間滞在した)そこでマリアが神を賛美している場面が描かれています。(「ルカによる福音書」第1章第39~56節)

マリア、エリサベトを訪ねる

39そのころ、マリアは出かけて、急いで山里に向かい、ユダの町に行った。 40そして、ザカリアの家に入ってエリサベトに挨拶した。 41マリアの挨拶をエリサベトが聞いたとき、その胎内の子がおどった。エリサベトは聖霊に満たされて、 42声高らかに言った。「あなたは女の中で祝福された方です。胎内のお子さまも祝福されています。 43わたしの主のお母さまがわたしのところに来てくださるとは、どういうわけでしょう。 44あなたの挨拶のお声をわたしが耳にしたとき、胎内の子は喜んでおどりました。 45主がおっしゃったことは必ず実現すると信じた方は、なんと幸いでしょう。」

マリアの賛歌

46そこで、マリアは言った。
「わたしの魂は主をあがめ、47わたしの霊は救い主である神を喜びたたえます。
48身分の低い、この主のはしためにも目を留めてくださったからです。今から後、いつの世の人もわたしを幸いな者と言うでしょう、49力ある方が、わたしに偉大なことをなさいましたから。
その御名は尊く、50その憐れみは代々に限りなく、主を畏れる者に及びます。
51主はその腕で力を振るい、思い上がる者を打ち散らし、
52権力ある者をその座から引き降ろし、身分の低い者を高く上げ、
53飢えた人を良い物で満たし、富める者を空腹のまま追い返されます。
54その僕イスラエルを受け入れて、憐れみをお忘れになりません、
55わたしたちの先祖におっしゃったとおり、アブラハムとその子孫に対してとこしえに。」
56マリアは、三か月ほどエリサベトのところに滞在してから、自分の家に帰った。

ルカによる福音書

第1章 第39~56節 新共同訳

このカンタータは、一貫してマリアの神への心情が歌われています。

このカンタータで有名なのは最後の10曲目『主よ、人の望みの喜びよ』だと思います。どこかで耳にしたことがあるのでは?

「イエスは変わらざるわが喜び」(Jesus bleibet meine Freude)から歌詞がはじまります。英語訳で”Jesus, Joy of Man’s Desiring”これが日本語訳として”主よ、人の望みの喜びよ”と呼ばれる所以であるそうです。

タイトルのHerz und Mund und Tat und LebenのLebenを”生活で”とするか”生き方で”と訳すかはまちまちなようです。個人的には”生き方”とした方がしっくりくるかなと思ってます。

Herz und Mund und Tat und Leben
Muß von Christo Zeugnis geben
Ohne Furcht und Heuchelei,
Daß er Gott und Heiland sei.

心と口と行いと生き方が
キリストについての証をしめさなくてはいけません。
怖れも偽りもなく、
キリストこそ神であり救い主であるのだと。

『対訳J.S.バッハ声楽全集』 慧文社 p292

第5曲目 アリア「イエスよ、道をつくり給え」はバイオリンの独奏に聞き入ってしまいます。
マリアが歌っているような情景が浮かび上がります。

第一部

Herz und Mund und Tat und Leben
Muss von Christo Zeugnis geben
Ohne Furcht und Heuchelei,
Dass er Gott und Heiland sei.

心と口と行いと生き様は、
キリストにういて証を示さなくてはいけません
恐れも偽りもなく、
キリストこそ神であり、救い主であることを。

Gebenedeiter Mund!
Maria macht ihr Innerstes der Seelen
Durch Dank und Rühmen kund;
Sie fänget bei sich an,
Des Heilands Wunder zu erzählen,
Was er an ihr als seiner Magd getan.
O menschliches Geschlecht,
Des Satans und der Sünden Knecht,
Du bist befreit
Durch Christi tröstendes Erscheinen
Von dieser Last und Dienstbarkeit!
Jedoch dein Mund und dein verstockt Gemüte
Verschweigt, verleugnet solche Güte;
Doch wisse, dass dich nach der Schrift
Ein allzuscharfes Urteil trifft!

祝福された口よ!
マリアは魂の内を
感謝と賛美によって告げた。
彼女は自らから、
救い主の奇跡を語り始めた。
その下女である彼女に行ってくれたことを。
おお、人の子よ、
サタンと罪の奴隷である者よ、
お前は解き放たれたのだ
キリストの慰めの現れによって、
この重荷と隷属から!
しかし、お前の口と頑なな心は
そのような恩恵に黙して、これを否定している。
だが知るがよい、聖書によれば、
非常に厳しい裁きが下るだろうことを!

Schäme dich, o Seele, nicht,
Deinen Heiland zu bekennen,
Soll er dich die seine nennen
Vor des Vaters Angesicht!
Doch wer ihn auf dieser Erden
Zu verleugnen sich nicht scheut,
Soll von ihm verleugnet werden,
Wenn er kommt zur Herrlichkeit.

恥じるな、おお魂よ、
あなたの救い主を公言することを。
救い主はあなたを自分の者として
父の前で呼んでくれるだろう。
しかし、この地上で
彼を否定してはばからなぬ者は、
彼が栄光に到達した時、
彼からも否定されるだろう。

Verstockung kann Gewaltige verblenden,
Bis sie des Höchsten Arm vom Stuhle stößt;
Doch dieser Arm erhebt,
Obschon vor ihm der Erde Kreis erbebt,
Hingegen die Elenden,
So er erlöst.
O hochbeglückte Christen,
Auf, machet euch bereit,
Itzt ist die angenehme Zeit,
Itzt ist der Tag des Heils: der Heiland heißt
Euch Leib und Geist
Mit Glaubensgaben rüsten,
Auf, ruft zu ihm in brünstigem Verlangen,
Um ihn im Glauben zu empfangen!

頑なな心は権威ある者たちを盲目にし、
ついには神の腕によりその座から引き落とされてしまう。
しかし、この腕は高く引き上げてもくださる、
彼の前で地上のすべてが震えようとも、
その腕は救われし者を引き上げてくださる。
おお、恵まれしキリスト者たちよ、
さあ、備えよ、
今こそ恵みの時、
今こそ救いの日:救い主が呼びかけておられる
あなたの肉体と魂を
信仰の贈り物をもって備えをしなさい、
さあ、呼びかけよ、希求する深い願いをもって 
彼を信仰によって迎えるために!

Bereite dir, Jesu, noch itzo die Bahn,
Mein Heiland, erwähle
Die gläubende Seele
Und siehe mit Augen der Gnade mich an!

イエスよ いままさに御心に目覚めています、
救い主よ、
この信じる魂を見つけてください
そして慈悲深い眼で私をみてください!

Wohl mir, dass ich Jesum habe,
O wie feste halt ich ihn,
Dass er mir mein Herze labe,
Wenn ich krank und traurig bin.
Jesum hab ich, der mich liebet
Und sich mir zu eigen gibet;
Ach drum lass ich Jesum nicht,
Wenn mir gleich mein Herze bricht.

なんと幸なことでしょう、私にはイエスがいるのですから、
ああ、私はなんとしっかりと彼を抱きしめていることでしょう、
彼は私の心を慰めてくれるのです、
私が病み、悲しんでいるときさえも。
私には、愛してくださる、自らを与えてくださるイエスいるのです、
ああ、だから私はイエスを放さない、
たとえこの心が張り裂けようとも。

第二部

Hilf, Jesu, hilf, dass ich auch dich bekenne
In Wohl und Weh, in Freud und Leid,
Dass ich dich meinen Heiland nenne
Im Glauben und Gelassenheit,
Dass stets mein Herz von deiner Liebe brenne.

イエスよ、どうかお助けください、私も信仰をもってお証しできますように
幸福の時も不幸の時も、喜びの時も苦しみの時も。
私の救い主としてあなたの名を呼べますように、
信じる心とゆだねる静けさの中で、
心が常にあなたの愛に燃えていますように。

Der höchsten Allmacht Wunderhand
Wirkt im Verborgenen der Erden.
Johannes muss mit Geist erfüllet werden,
Ihn zieht der Liebe Band
Bereits in seiner Mutter Leibe,
Dass er den Heiland kennt,
Ob er ihn gleich noch nicht
Mit seinem Munde nennt,
Er wird bewegt, er hüpft und springet,
Indem Elisabeth das Wunderwerk ausspricht,
Indem Mariae Mund der Lippen Opfer bringet.
Wenn ihr, o Gläubige, des Fleisches Schwachheit merkt
Wenn euer Herz in Liebe brennet,
Und doch der Mund den Heiland nicht bekennet,
Gott ist es, der euch kräftig stärkt,
Er will in euch des Geistes Kraft erregen,
Ja Dank und Preis auf eure Zunge legen.

いと貴き全能なる御手は
地の隠れたところで働かれています。
ヨハネは聖霊に満たされることでしょう。
彼はすでに、愛の絆によって結ばれています、
母の胎内にありながらも、
救い主を知っています。
たとえまだその口で
御名を呼ぶことがなくとも。
彼は動き、跳ね、喜び踊る。
それは、エリサベトがその不思議な業を語ったとき、
マリアの唇が賛美をささげたときに。
信じる者たちよ、もし肉の弱さに気付くとき、
もし心が愛に燃えながらも、
口が救い主を告白できないときでも、
神こそが、あなたを力強く支えてくださる、
あなたのうちに聖霊の力を呼び起こし、
感謝と賛美の言葉をあなたの唇にそえてくださるでしょう。

Ich will von Jesu Wundern singen
Und ihm der Lippen Opfer bringen,
Er wird nach seiner Liebe Bund
Das schwache Fleisch, den irdischen Mund
Durch heilges Feuer kräftig zwingen.

私はイエスの奇跡を歌いたい、
そして唇で賛美の捧げものを届けよう、
イエスは愛の契約に従って
弱き肉体と空しい口を、
聖なる炎によって力強く導いてくださいます。

Jesus bleibet meine Freude,
Meines Herzens Trost und Saft,
Jesus wehret allem Leide,
Er ist meines Lebens Kraft,
Meiner Augen Lust und Sonne,
Meiner Seele Schatz und Wonne;
Darum lass ich Jesum nicht
Aus dem Herzen und Gesicht.

イエスは変わらず私の喜び、
私の心の慰めと力の源であり続けます、
イエスはすべての苦しみを退け、
私の命の力、
私の目の喜びであり太陽、
私の魂の宝であり至福、
ですから 私はイエスを決して放しません
心と目の届くところから。

Chat GTP +
『対訳J.S.バッハ声楽全集』 慧文社 p292-p294 +
『教会暦で楽しむバッハの教会カンタータ―』 那須田務 春秋社 p170-p171

コメント