バッハ カンタータ― BWV 78 Jesu, der du meine Seele イエスよ、汝わが魂を
三位一体節後第14日曜日
ルカによる福音書 第17章第11節~第19節
規定の病を患っている十人の人を清める
イエスは、エルサレムに進んでいく途中、サマリアとガリラヤの間を通られた。ある村に入られるとき、規定の病を患っている十人の人が出迎え、遠くに立ったまま、声を張り上げて、「イエス様、先生、私たちを憐れんでください」と言った。イエスは彼らを見て言われた。「行って、祭司たちに体をみせなさい。」彼らは、そこへ行く途中で清くされた。その中の一人は、自分が癒されたのを知って、大声で神を崇めながら戻ってきた。そして、イエスの足元にひれ伏して感謝した。この人はサマリア人だった。そこで、イエスは言われた。「清くされたのは十人ではなかったか。ほかの九人はどこにいるのか。この外国人のほかに、神を崇めるために戻ってきた者はいないのか。」それから、イエスはその人に言われた。「立ち上がって、行きなさい。あなたの信仰があなたを救った。」『ルカによる福音書』 第17章第11~19節 日本聖書協会共同訳
当時、皮膚病にかかった人は人にうつすと恐れられ、拝礼に参加できない。この曲の歌詞はこの戻ってきたサマリア人の視点なのかもしれない。または、それを目撃していた人々かもしれない。しかも、イエスが十字架にかけられた後、イエスに思いを馳せるような情景が浮かんできます。
第1曲 コラール合唱『イエスよ、汝わが魂を』(Jesu, der du meine Seele)
Jesu, der du meine Seele
Hast durch deinen bittern Tod
Aus des Teufels finstern Höhle
Und der schweren Seelennot
Kräftiglich herausgerissen
Und mich solches lassen wissen
Durch dein angenehmes Wort,
Sei doch itzt, o Gott, mein Hort!
イエスよ、あなたは私の魂を
自らの辛い死によって
悪魔の暗い洞穴から
重い魂の苦しみから
力強く救い出し、
私にその事を分からせてくれました。
自らの心地よい言葉で。
どうか今こそ、おお神よ、私の守護者でいてください!
『新装版 対訳J.S.バッハ声楽全集』 若林敦盛 慧文社 p160
第2曲 二重唱『われは急ぐ』(Wir eilen mit schwachen)
Wir eilen mit schwachen, doch emsigen Schritten,
O Jesu, o Meister, zu helfen zu dir.
Du suchest die Kranken und Irrenden treulich.
Ach höre, wie wir
Die Stimmen erheben, um Hülfe zu bitten!
Es sei uns dein gnädiges Antlitz erfreulich!
私たちは急ぎます、弱くとも、たゆまぬ足取りで、
おおイエスよ、おお師よ、救いを求めてあなたのもとへと、
あなたは病人やさまよう人々を誠実に探してくれます。
ああ聞いてください、どんなに私たちが声を上げているか、救いを願って!
私たちをあなたの恵み深き顔で喜ばせてください!
『新装版 対訳J.S.バッハ声楽全集』 若林敦盛 慧文社 p160
第3曲 レチタティーヴォ『ああ、われ罪の子』(Ach! ich bin ein Kind der Sünden)
Ach! ich bin ein Kind der Sünden,
Ach! ich irre weit und breit.
Der Sünden Aussatz, so an mir zu finden,
Verläßt mich nicht in dieser Sterblichkeit.
Mein Wille trachtet nur nach Bösen.
Der Geist zwar spricht: ach! wer wird mich erlösen?
Aber Fleisch und Blut zu zwingen
Und das Gute zu vollbringen,
Ist über alle meine Kraft.
Will ich den Schaden nicht verhehlen,
So kann ich nicht, wie oft ich fehle, zählen.
Drum nehm ich nun der Sünden Schmerz und Pein
Und meiner Sorgen Bürde,
So mir sonst unerträglich würde,
Ich liefre sie dir, Jesu, seufzend ein.
Rechne nicht die Missetat,
Die dich, Herr, erzürnet hat!
ああ!私は罪の子だ。
ああ!私はあてもなくさまよっている。
罪の腫れ物が、私のもとへと来て、
この死ぬべき身の私から去ろうとしない。
私の思いは、悪いことばかりを望んでいるのだ。
確かに霊は語る。「ああ!誰が私を救ってくれるのだろう?」
けれども肉と血を制すること
そして善を果たすことは、
私の力のすべてでも及ばない。
たとえ私がこの欠陥を隠そうとしなくても、
私にはできない、自分にどれほどの過ちがあるか、数えることは。
だから私はいまやこの罪の痛みと苦しみを取り除き自分の不安の重荷を降ろす、
そうしないと私にはたえられなくなるから。
私はそれをあなたに渡します、イエスと、嘆きながら、悪事を数え上げないでください、
あなたを、主よ、怒らせてきた悪事を!
『新装版 対訳J.S.バッハ声楽全集』 若林敦盛 慧文社 p160
第4曲 アリア『わが咎を消し去る御血潮』(Dein Blut, so meine Schuld durchstreicht)
Das Blut, so meine Schuld durchstreicht,
Macht mir das Herze wieder leicht
Und spricht mich frei.
Ruft mich der Höllen Heer zum Streite,
So stehet Jesus mir zur Seite,
Daß ich beherzt und sieghaft sei.
この血が、私の咎を消したり、
私の心を再び軽くして
私のことを公に語ってくれる。
私を地獄の軍勢が戦いへと呼び出しても、
イエスが私の側にいて、
私を勇気づけ、勝利を確信させてくれるのだ。
『新装版 対訳J.S.バッハ声楽全集』 若林敦盛 慧文社 p161
第5曲 レチタティーヴォ『傷、釘、荊、墓』(Die Wunden, Nägel, Kron und Grab)
Die Wunden, Nägel, Kron und Grab,
Die Schläge, so man dort dem Heiland gab,
Sind ihn nunmehro Siegeszeichen
Und können mir erneute Kräfte reichen.
Wenn ein erschreckliches Gericht
Den Fluch vor die Verdammten spricht,
So kehrst du ihn in Segen.
Mich kann kein Schmerz und keine Pein bewegen,
Weil sie mein Heiland kennt;
Und da dein Herz vor mich in Liebe brennt,
So lege ich hinwieder
Das meine vor dich nieder.
Dies mein Herz, mit Leid vermenget,
So dein teures Blut besprenget,
So am Kreuz vergossen ist,
Geb ich dir, Herr Jesu Christ.
傷、釘、冠、そして墓、
殴打、それがあの時救いの主に与えられましたが、それらは主にとってはいまや勝利の証であり私に新しい力を与えてくれるのです。
恐ろしい裁きが
神罰を永遠の罰を受けた者たちの前で述べる時も、あなたはそれを祝福へと変えてくれます。
私をどんな傷みもどんな苦しみも動揺させることはありません。
それを私の救い主は知っているのですから。
そしてあなたの心は私のために愛に燃え、
それで私は再び
自分の心をあたなの前に横たえるのです。
この私の心を、苦悩を共に混ざ合わせ、
あたなの貴い血を注ぎます、
十字架で流された血を。
そしてあなたに捧げます、主イエス・キリストよ。
『新装版 対訳J.S.バッハ声楽全集』 若林敦盛 慧文社 p161
第6曲 アリア『今や汝わが良心を鎮むべし』(Nun du wirst mein Gewissen stillen)
Nun du wirst mein Gewissen stillen,
So wider mich um Rache schreit,
Ja, deine Treue wird’s erfüllen,
Weil mir dein Wort die Hoffnung beut.
Wenn Christen an dich glauben,
Wird sie kein Feind in Ewigkeit
Aus deinen Händen rauben.
いまやあなたは私の良心を静めてくれます、
私に対する復讐を叫ぶ良心を。
そう、あなたの誠実さが果たしてくれるでしょう、
私にあなたの言葉が希望を与えてくれるのですから。
キリスト者たちがあたなを信じるなら、
彼らをどんな敵も、永遠にあなたの手から奪うことはないでしょう。
『新装版 対訳J.S.バッハ声楽全集』 若林敦盛 慧文社 p161
第7曲 コラール『主はわが弱きを助くと信じたり』(Herr, ich glaube, hilf mir Schwachen)
Herr, ich glaube, hilf mir Schwachen,
Laß mich ja verzagen nicht;
Du, du kannst mich stärker machen,
Wenn mich Sünd und Tod anficht.
Deiner Güte will ich trauen,
Bis ich fröhlich werde schauen
Dich, Herr Jesu, nach dem Streit
In der süßen Ewigkeit.
主よ、私は信じています、私の弱さを助け、
私がひるまないようにしてください。
あなたは、私を強くすることができるのですから、
私を罪と死が動揺させる時にも。
あなたの慈しみを私は信頼します、
私が喜んで眺めるまでは、
あなたの姿を、主イエスよ、戦いが終わった後甘き永遠の中で。
『新装版 対訳J.S.バッハ声楽全集』 若林敦盛 慧文社 p161
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