フチ捻を量産系に改良してみた

いま話題の革小物ブログレザークラフターもご参考ください。

すごいマイナーな工具についてのお話です(笑。写真はPTCヒーターを使ったフチ捻です。あまり流行ってない感じですが、個人的に重宝しています。何に使う物なのか?革装丁や革作品の制作に使う工具なのです。

まず量産系とは何か(笑

独自用語がいきなり入ってきてもうしわけありません。フチ捻を量産系にとは、一定の温度を保ち何度も複数のパーツにフチ捻を入れることを想定してその目的に叶うという物を指しています。このように同時に複数のパーツを想定している道具を、個人的に量産に向いているとか・量産系な道具だと呼んでいます。

フチ捻を通常使用する場合、アルコールランプ等で熱するとかして使用していると思います。通常はアナログな道具であります。温度を測って使うとかではなく、体感や手で触った感じなどの経験が物をいう世界であり、使用する革によっても温度を変えたり職人の技が光るところとも言えます。ところどころ温度に違うあたり方をしているのも良く言えば、ハンドメイド感が出ていいところです。

アルコールランプの温度分布がわかるサイトがありましたので貼っておきます。

アルコールランプの温度分布

炎の青い部分は最高で1040℃あるそうです。しかしかながら、皮革にとって1040℃は温度が高すぎます。高いあまりに温度調整が難しいのではないかなと思います。

それでは皮革は何度くらいの温度まで耐えられるのか。そういった実験をした科学的データがございますので引用させて頂きます。

岡村浩 編『皮革の消費科学』2003,p70,図29-1 革の熱変性温度と水分の関係

こちらのデータはあらゆる革を想定した数値というよりは、一般論としての数値として捉えて参考程度に考えるというのがよろしいかと思います。

少なくとも200℃を超える場合には、素材の皮にダメージが入ると考えてよいと思います。

この点を考えますと、アルコールランプの1040℃やその周辺の630℃は、オーバーキルであり。温度が下がったら再度熱するを繰り返すと、もはやフチ念の温度差が歪に表れてしまうことを物語っています。

依頼を受けて一つの作品をつくる、というのであれば何ら問題はない、と思います。

問題は10個~20個と同じものを作るタイプの職人さんにとって、この温度差の歪さが不快に思う場合があるように思います。

早速作っていきます。

まず用意するものは以下五つです。

① フチ捻 (SINCE製のような太いものがおすすめです。)

② 手元を覆うカバー (コードを隠すこと or 熱すると直で持つことが困難なほど熱くなるため)

③ グルーガン (ダイソーの物:最大温度165℃を用意。セリアの物は200℃いくものもあり温度が高すぎるのでご注意)

④ 絶縁チューブ(熱収縮タイプ)

⑤ ステンレス針金 (0.5mm)

 

グルーガンを分解していきます。ここからは自己責任でお願い致します。(絶縁処理がうまく出来ていない場合、感電や発火の恐れがございますので十分にご注意してください)

ネジ穴を開け

中身を取り出します。

PTCヒーターが出てきます。こちらをフチ念に取り付けていく構造になります。

コードの先にちょっと邪魔なものがあるので、それを取り外します。

絶縁チューブを用意します。

絶縁チューブを被せて、ライターで炙ります。

これでコードは出来上がり!

次にPTCヒーターをフチ捻に取り付けていきます。

ここで大き目の絶縁チューブも用意します。

絶縁チューブで覆い隠して、ライターで炙ります。

位置を固定し、ステンレス針金を巻いていきます。

取っ手部分のカバーを取り付けていきます。カバー無しだと熱くて持てませんので何かしらのカバーが必要になると思います。(自分は牛革で作りました)

あらかじめ作っておいた、取っ手カバーの取り付けイメージ。↑

縫い合わせて コバを綺麗すれば完成です。

以上。フチ捻を量産系に改良してみたでした。

コストはそんなにかからずに改良できますので、(自己責任)で試してみてください。

私の場合は、作業台の隣に皮革用スプレーブースが2台にありまして、アルコールランプを使うといつか爆発や火災を引き起こすのではないかと心配で電気フチ捻が欲しかったのであります。自分で道具を作るのもまた一興、だと思います。

哲学堂書店&哲学堂工房 浦山幹生

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