ロックやバークリの研究者として、またローティの著作の翻訳者として知られる著者が、カント哲学の批判的な読解を試みる一連の仕事の完結篇。『純粋理性批判』におけるカントの超越論的観念論が、明証必然的な理論を標榜しつつも実は自然科学の知見を密かな基盤としていたことを明らかにし、時代の子としてのカントの実像に迫る。(引用)
第1章 「独断のまどろみ」からの不可解な「覚醒」──「唯一の原理」への奇妙な道筋
はじめに
1 カントの説明
2 ヒュームの議論
3 補説・『人間知性についての研究』の場合
4 カントの奇妙な対応(一)──ヒュームが最初から経験論者であったにもかかわらず
5 思考実験──もしも基になる印象が見つかったとしたら、カントはどうするつもりだったのか
6 カントの奇妙な対応(二)──「関係の観念」は印象や感覚ではありえないにもかかわらず
7 関係の観念の特殊性──ロック・バークリ・ヒューム
8 「唯一の原理」への道
第2章 ロックの反生得説とカントの胚芽生得説──カントが言うほどカントとロックは違うのか?
はじめに
1 カントのロック評──私はロックとはこのように違う
2 なぜ経験由来であってはならないのか──必然性の問題
3 ロックの反生得説
4 「機会」・「胚芽」・「素質」
5 ロックの実際の議論(一)──カントが言うのとは違っている
6 ロックの実際の議論(二)──「単一性」の観念の場合
7 ロックの実際の議論(三)──狭義における「実体」観念の場合
8 カント自身の反生得説
9 人間に固有のものなのか?
10 「胚芽」と「素質」・再考──人類学主義
11 ロックの「規約主義」
第3章 カントはロックとヒュームを超えられたのか?──アプリオリ化の実像
はじめに
1 ヒュームによるロックのなぞり
2 「図式」論──カントはロックやヒュームを乗り越えてはいない
3 知覚判断と経験判断
4 カント説のもう一つの謎──必然性をめぐる循環
5 自然科学を基盤とした形而上学
第4章 そもそも「演繹」は必要だったのか?──自身の「経験」概念の絶対化
はじめに
1 客観的演繹と主観的演繹
2 客観的演繹の要
3 カント自身の「経験」理解が基盤となって
4 カントの議論の実際
5 カントの立論の論理構造
6 純粋知性概念(カテゴリー)の導出・再考
7 カントの循環
第5章 判断とカテゴリーの恣意的な扱い──カントの隠れ自然主義
はじめに
1 「判断の量」と「量のカテゴリー」
2 「判断の質」と「質のカテゴリー」
3 論理のすり替え
4 「図式」論におけるカントの説明
5 「直観の公理」
6 「直観」と「感覚」の区別
7 「知覚の予想」
8 ロックと比較して
9 今日の自然科学においては
10 古代ギリシャ以来の伝統
11 伝統的論理学の視点の不当な使用
12 「判断の関係」と「関係のカテゴリー」
13 原則と自然科学の原理の深い関係
14 カントの隠れ自然主義再説
15 カントの循環再説──何のための「演繹」か?
第6章 空間の観念化とその代償──議論の浅さとその不整合の意味するもの
はじめに
1 「空間について」──「形而上学的究明」と「超越論的究明」
2 序にあたる部分──「外的感官」と「内的感官」
3 「空間について」──本論の基本的議論
4 第二版での「形而上学的究明」と「超越論的究明」
5 幾何学の可能性
6 「多様なもの」とその「結合」
7 ロックの場合(一)──観念の複合化と知識
8 ロックの場合(二)──単純観念と識別
9 空間中の対象と、多様なもの
10 モリニュー問題から
11 空間再考、そして、残された問題
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