人は、愛されて愛を知り、愛し返して初めて“人間”となる。愛とは、愛する相手の存在を無条件的全体的に肯定することであり、しかもこのような「愛と応答愛」の関係以外には“人間の尊厳”が輝き出るところはない、とシェーラーは説く。本書が論証するのは、この主張が、シェーラーが現代倫理学の根本問題として提起しながらも、答える前に急逝した以下の問い、つまりは、“歴史の広大な発達段階のうちに常に新たに入り込んでいく自己意識と自己価値意識の昂進は、一箇の人間が徐々に自己の真実の尊厳の意識に近づいていく歴史であるのか、あるいはたんに誇大妄想の歴史でしかないのか?”という問いへの彼の答えだということである。(引用)
目次
起点としての“尊厳死”の「尊厳」問題
「愛の秩序」としての「同情感情の基礎づけ法則」(その一)
「愛の秩序」としての「同情感情の基礎づけ法則」(その二)
「愛の秩序」としての「同情感情の基礎づけ法則」(その三)
“精神化した高次の自愛”としての「道徳的な自己愛」の主体
人間的「人格」の「生成と存在」の場としての「社会的統一態」
「欲得社会」での「最高の自己愛」としての「真正な自己愛」
「倫理的宇宙」としての「教会」の一員となる「真正な自己愛」の主体
シェーラーの描く「倫理的に価値ある人格」像とその破棄
シェーラーを導いていた“いま一つ”の「倫理的に価値ある人格」像
シェーラーの倫理思想の今日的な意義―結語に代えて
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