前偏
後編
本音で話し合い、連携して、目標を達成する。もっとパフォーマンスを発揮できる組織にする。そういった理想は理解できます。しかし、人間はもっとダークな側面が内在している動物でもあると思います。
この問題の背後には、メタ的な防衛行動の問題があるように思うのです。
分かりやすく言えば、ある程度の年齢を重ねると、ギバーとテイカーの存在に気が付くということです。
親身に近づいてき、操作するフレネミーやマニュピレーターの存在。「人の不幸は蜜の味」、シャーデンフロイデなる私たちのもつ自然な感情。マキャベリアニズム、サイコパシー、ナルシシズムが強く表れるダークトライアドの存在。
私たちは上のような存在に間違いなく出会っています。
そのような現実世界で「本音を話し合う」ことがどいうことか、いかに危険な綱を渡ることになっているか、多くの大人は直観で知っているといってもいいのではないでしょうか。
私が思うに、分断は必然なのではないかと思います。
私たちは上のように理想の組織を構築できるような進化を辿ってきてはいないようです。(なぜ悪人が上に立つのか: 人間社会の不都合な権力構造:ブライアン・クラース)
しかし、いかにその理想に近づくか、がこの本の魅力だと思います。様々な組織を見てきた知見から、未来を良くしようというエネルギーに充ち溢れています。相手を信じて、努力することはとても大切なことだと思います。お互いに影響し合い、自分が何者になりたいか前に向いて進み合う組織や環境というのは、大変に魅力的なことでしょう。
どうすればいいのか、その答えはまだ見つかりません。
多くの専門家は口をそろえて言っています。
「彼ら(ダークトライアド)から距離をとれ。ターゲットにされるな、歯向かうな」と。
一方で、より良い活力ある組織や会社のために、「本音を話すように」とはグロテスクすぎるかもしれません。
人口増加を前提とした資本主義と民主主義の仕組みの上で、明らかになりつつある私たちの特性。
短い動画ですが、益田先生のお話はわかりやすいと思います。
「めったに存在しない良いリーダーの登場に期待するよりも、自己利益を追求し、自分のことは自分で守る方が良い」
この格言を覆すには、相当な仕組みづくりとその仕組みへの相当な信頼が必要になることでしょう。
哲学堂書店 浦山幹生
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