人間中心主義を超え、存在という出来事そのものの思索に向かった後期ハイデガー。その途上に現れながらも従来主題的に取り上げられてこなかった〈中動態〉の概念と、家/ポリス/宇宙の中心としての〈竈〉の形象に注目し、エルアイクニスの再帰的運動を解明する。テクストの内在的研究であると同時に、古代ギリシア以来の精神史的・神話学的伝統のなかに現代哲学を位置づけなおす気鋭の研究。(引用)
序 論
はじめに
第一節 中動態の現在-言語学から哲学へ
第二節 ハイデガーと中動態
第三節 ハイデガーと地平
第四節 ハイデガーと竈
むすび-本書の概要
第一部 初期および形而上学期の思想における中動媒体性と時間の地平
第一章 『存在と時間』における現象とロゴスの中動媒体性
はじめに
第一節 本来的現象概念の意味
第二節 現象の所与性
第三節 ロゴスの中動性と媒体性
第四節 意味・了解・解釈
むすび
第二章 関心の中動媒体性
はじめに
第一節 関心と中動態
第二節 アリストテレスの善と自由
第三節 アウグスティヌスの善と自由
第四節 関心と時間性
むすび
第三章 人間中心主義と地平の問題
はじめに
第一節 時間性とテンポラリテート
第二節 テンポラリテートと図式
第三節 一九二七年夏学期講義における存在論と現在の地平図式
第四節 一九二八年夏学期講義における形而上学と将来および既在の地平図式
第五節 人間中心主義と存在論的差異
第六節 地平の限界としての無
むすび
第二部 中期・後期思想における存在の中動媒体性と竈
第四章 人間の脱中心化と存在の中動媒体性
はじめに
第一節 自己批判としての人間の脱中心化
第二節 エルアイクニスと中動媒体性
第三節 竈と中動媒体性-シェリングにおける「生命の竈」を手がかりに
むすび
第五章 竈の精神史-ニーチェを手がかりとして
はじめに
第一節 竈、あるいは控えめな女神の精神史-古代ギリシアへ
第二節 ピュタゴラス学派の竈とその伝統
第三節 ギリシアの家とヘスティア-ふたたび古代へ
第四節 シュノイキア祭とアテナイの竈
第五節 神々の臨在と立ち去り、あるいは誕生と死
むすび
第六章 ハイデガーにおける竈の概観
はじめに
第一節 一九三〇年代『黒ノート』における竈
第二節 一九三〇年代の講義における竈
第三節 竈とアレーテイア-一九六二年のテクストから
むすび
第七章 『アンティゴネー』における竈めぐる彷徨-あるいは人間の離心性について
はじめに
第一節 デイノンとペレイン
第二節 パントポロスとアポロス
第三節 フュプシポリスとアポリス
第四節 パレスティオス-竈をめぐる非家郷者
むすび
第八章 ヘルダーリンと竈
はじめに
第一節 初期詩作における竈
第二節 『ヒュペーリオン』における竈
第三節 悲劇『エンペドクレスの死』におけるウェスタ
第四節 後期詩作における竈
第五節 竈と臍
第六節 Vesta/vest/Veste
むすび
第九章 ヘルダーリン解釈における根源と竈の場所
はじめに
第一節 家の竈
第二節 根源の意味としての覆蔵と発現
第三節 半神の居場所としての竈と〈時〉
第四節 詩人-あるいは夜を守り、夜を明かす者
むすび
第一〇章 イプノスの傍らで-ヘラクレイトスの竈の意味
はじめに
第一節 ヘラクレイトスに関する伝承の解釈
第二節 イプノスとヘスティア
第三節 ヘスティアとロゴス
むすび
結 論
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