引き続き 工房ネタです。
今回は40年も昔に発売された業務用アイロンについてお話してみたいと思います。
唯一無二の小林アイロン
意外と愛用者が多い小林アイロンですが、製造は終了しており、 現在は新品で入手できません。似た物に タキイ式工業用アイロン5型 というものがありますが、お高いです。39800円
ナオモト工業 naomoto ドライ 業務用アイロン EA50 税込53,763円

これらのアイロンは、通称ドライアイロンと呼ばれているアイロンです。
蒸気がでるアイロンと違って、まっ平な平面になっております。
そしてなにより大切なのがその重量、重さであり、2~4kgあるアイロンになります。
軽く筋トレが出来てしまいます。
現在は新品で購入すると税込53,763円程度出さないと入手できなくなっております。
そこで小林アイロンの登場です!
まだあまり知られていないため、ヤフオクやメルカリで5000円程度で入手できます。
見つけたら 即ポチを強く推奨いたします。(今後入手できなくなるでしょう)
5000円~15000円前後までなら 入手価値はありだと思います。
このような業務用アイロンが新たに発売されたとしても、数万円台になってしまうと思います。
ドライアイロンを選ぶ上での注意点
ドライアイロンを選ぶ上で注意点が一つあります。
ドライアイロンで検索すると、いつくか出てくると思いますが、
レザークラフトで使う場合に注意する点がございます。
衣類の貼りつきを防止するようなテフロン加工やフッ素加工など施されているドライアイロンは、レザークラフト向きではないので注意が必要です。
レザークラフトではアクリル樹脂やウレタン樹脂の熱可塑性を利用して平にする処置なども行うことがあるため、テフロン加工やフッ素加工の表面とよからぬ反応が起こってしまう場合があります。革もダメになり、アイロンもダメになってしまう恐れがあるため、なにも加工が施されていないドライアイロンををお勧めいたします。有機溶剤の入ったトップコートを使ったりするので、対薬品性があろうと有機溶剤がテフロン加工やフッ素加工の面と反応して、最悪加工塗装が溶けだしてしまう可能性もあります。また、加工面が摩耗してアイロン側が平でなくなってしまうなど、いろいろレザークラフト向けには難しいと言わざるを得ない面が多々あるので、この点だけは注意してください。テフロン加工は摩擦に弱いので、キズが付いたままアイロンがけをすると革にも傷がついてしまう場合もあります。
レザークラフトで使う場合、なにかと気を使わなくてはならないため、テフロン加工やフッ素加工が施されていないアイロンを選ぶのがおすすめです。
革は熱に弱い
革は天然素材ということもあり、熱に弱い素材です。
120℃くらいが限界で、水分を含ませると急激に熱に弱くなり、縮んでしまう性質があります。
布用のアイロンを想定して設計されているため、通常のアイロンは200℃を超える製品ばかりかと思います。温度調整機能があるものを選ぶのが一番ですが、古い小林アイロンでは温度調整機能付きのものはさらに数が少ないという現状があります。
温度調整機能付き小林アイロンを見つけたら 即ポチを強く推奨いたします。
しかし、温度調整機能が無くても、スピードコントローラーを使って、温度調整ができますのでそこまでガッカリしなくても大丈夫です!
参考までの商品ですが、
1500Wまで対応のコントローラーなので、温度を調整して使用することができます。他にも似たような商品があると思いますので探してみてください。
アイロンを使った床面の最速処理
レザークラフトにおいて、革の床面の毛羽立ちを抑える処置をする場合があります。
汚れの漂着を抑えて耐久性を上げる効果があります。
床面に薬剤を付けて、ガラス板でこすって平にする方法が一般的です。
一つ一つ手作業なのでとても時間がかかります。床面処理を革購入の段階で頼める革問屋さんもございますがそれなりの代金が加算されます。(しかし、手でやるよりかはおすすめです)
しかし、小林アイロンがあれば一気に平にすることができるのです。
アイロンの銀面処理
表面の平滑化:シワを伸ばし、革の表面を滑らかにします。
艶出し:革に光沢を与え、高級感を演出します。
塗膜の固定:塗料を革にしっかりと密着させ、耐久性を高めます。
アイロンの床面処理
床面の毛羽立ちを押さえ、表面を滑らかにします。
引っかかりや、汚れの付着を軽減し耐久性を高めます。
なぜ仕立て屋さんは重いアイロンを使うのか

皮革業界ではありませんが、仕立て屋さんも愛用する小林アイロン
どのような点が優れているのかまとめてみました。
なぜ仕立て屋さんは重いアイロンを使うのか
仕立て屋さんが「ガスアイロン」や「電気アイロン」に関わらず、重いドライアイロンを愛用するのには、きちんとした理由があります。それは、アイロンがけに必要な3つの要素——圧力・温度・時間——に関係しています。
- 圧力をかけるための「重さ」
アイロンが重いと、それだけで自然に圧力がかかります。軽いアイロンでは強く押さえるために腕力を使う必要がありますが、重いアイロンなら自重でしっかり布を押さえつけることができます。これによって、ムラのない美しいプレスが可能になります。 - 動かずに「時間」をかけられる
重いアイロンは安定しているため、手を離しても簡単には動きません。これは、一か所にじっくり時間をかけてプレスできるという利点になります。逆に、軽いアイロンはちょっとした振動や力で動いてしまい、プレス中に位置がズレてしまうことも。これでは力が逃げてしまい、うまく仕上がりません。 - 「温度」が安定している
鉄製の重いアイロンは、熱が冷めにくいという特徴があります。たとえサーモスタット(温度調節装置)がなくても、一度温めればしばらく高温を保てます。サーモ付きのものであれば、さらに安定した温度で作業できるため、プロの現場でも重宝されています。 - 穴のない構造もポイント
最近のスチームアイロンには蒸気を出すための穴が空いていますが、この穴が意外な弱点になることもあります。というのも、どれだけ重くても、その穴の部分には圧力がかからないため、均一なプレスができなくなるのです。仕立て屋さんが穴のないドライアイロンを選ぶのは、こうした理由からです。
このように、重さ・熱の保持力・構造など、すべてがプロの仕上がりに直結するため、重いアイロンは仕立ての現場で長年愛用されているのです。
レザークラフトでも要領は同じ

革靴ジャーナルさんのサイトに山陽レザーさんの工場見学の記事がございました。
「アイロン・型押し」の項目を見て頂くと、大きなハンドアイロンが見えます。
レザークラフトをやっていると革を半裁で購入するときが出てくると思います。切革ではないので、丸まって輸送されてくるわけですが、いざ切り出して使用する段階になると、丸まっていたせいで革がそり上がってしまうことがあります。このまま製作していくには不便で、どうにか平にしたいわけですが、そこで活躍するのがアイロンです。
革が丸まってそっている状態をアイロンで真っ平にすることができます。同時に床面処理もしてしまえば一石二鳥で、次の作業に移行しやすいわけです。
インスタグラムの方に、床面処理の様子を動画にしてあります。
最近では皮革塗料メーカーのLizedさんが皮革製造工場であるタンナーが使用する製品を、コンシューマー向けに販売しております。
Lizedさん製品を使ってみた感想ですが、製品によってウレタン樹脂もそれぞれ細かに変えられていたり、ワックス系統の製品も各々融点が想定にあわせて変えてあったりと、クラフターのことを考えて製品開発されていると感じ取ることができます。また、そういった製品からの声を感じ取って、こういった使い方を想定しているのかと、学ばせてもらうこともあります。
小林アイロンの外観



「小林アイロン」は、昭和時代に日本で製造された業務用の鉄製アイロン。特に仕立て屋や服飾業界で長年愛用されてきました。その頑丈さとシンプルな構造から、現在も多くの職人や愛好者に支持されています。
重量があり、均一にアイロンをあてることができます。
こちらは私が愛用している温度調整付きの小林アイロンです。
最大200℃まで温度を上げられます。
レザークラフトで使うときは、60℃~80℃くらいまでしか上げることはしません。
革の耐熱性について
革の温度耐性につきましてはこちらの研究データを参考になります。

『皮革の消費科学』 編集:岡村治 皮革工業新聞社 p70
クロム革とタンニン鞣し革で熱耐性が異なっております。
図29-1からもわかるように、革が湿っている状態:湿潤状態では耐熱性が著しく異なっています。乾かすだけと気軽にアイロンをかける場合でも温度には注意しなければならないのでご注意ください。
もう少し詳しく知りたい場合は
日本皮革技術協会さんが発行している『新版 皮革科学』のp227あたりをご参考ください。
レザークラフトではアイロンを手に入れると、さらに奥が深い世界が待っています!
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