親切の人類史-ヒトはいかにして利他の心を獲得したか

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親切の人類史

ヒトはいかにして利他の心を獲得したか
みすず書房
マイケル・E.マカロー 著
的場知之 訳
四六判

人間の「利他の心」の存在はどのように説明できるだろう? 一筋縄ではいかないこの問いに、進化生物学と慈善の歴史という観点から挑みかかる。「利他行動」は生物学の難問の一つだ。ヒトをはじめ、他個体を利する行動をとる動物は実際に存在する。だがしかし、寛大にも他者を思いやる個体の遺伝子は、狡猾な個体に出し抜かれて繁殖機会を奪われ、淘汰されてしまうのでは? 生物学者たちはこのことにおおいに悩み、利他行動を説明できる理論を求めて奮闘してきた。ただし、人間の利他の心は、生物学だけで完全に説明することはできない。社会福祉制度や慈善活動などの方法で、血縁や地域を超えた「完全な赤の他人」にまで援助の手を差し伸べる動物は人間以外にいないのだ。ここには、何か特別な説明が必要になる。著者によれば、一万年の人類史における「七つの大いなる苦難」を、人類がどう解決してきたかが説明のカギだという。本書では、利他行動に関するいくつかの理論の要点とその妥当性を検討したのち、歴史を通して力を発揮してきた人間特有の能力を鮮やかに提示する。人類史上もっとも寛大な「思いやりの黄金時代」を生きる私たち。ここへ至るまでの道程を照らし出す、本能と理性のビッグヒストリー。(引用)

目次
第1章 思いやりの黄金時代
第2章 アダム・スミスの小指
シニカルなミスター・スミス
注意の限界
共感の限界
フォーマットエラー
ひとつの謎
第3章 進化の重力
ダーウィンの危険な思想
進化心理学とそれに対する批判
協力はコストを伴う
第4章 すべては相対的(リラティブ)だ
利他的デザインの基礎
母の家庭料理
手がかりは子宮にあり
母親、きょうだい、その他の親族
家族へのフォーカス
ハミルトンの法則と黄金律
第5章 ミスター・スポックへ、愛を込めて
真社会性から群淘汰へ
群淘汰のセレクション
個人のニーズと多数のニーズ
マルチレベル淘汰
親切は敵を滅ぼす?
またもや行き止まり
第6章 大いなる報酬
デジタル進化
球体度低めの牛
最近、わたしに何かしてくれた?
動くごちそう
イメージ重視
石器時代のサマリア人?
互恵性、評判、理性
第7章 孤児の時代
農民たち
無関心から不平等へ
不平等から抑圧へ
思いやりという策略
第8章 思いやりの時代
枢軸時代の寛大さの原因
枢軸時代の最優先司令
推論からレトリックへ
黄金律時代のユダヤ教徒の慈善活動
小休止
第9章 予防の時代
ビバ、ビベス!
イングランドの改革
ゴー・ダッチ
親切は残酷だ
得られた教訓
第10章 第一次貧困啓蒙時代
光あれ
第一のアイディア 分配的正義
フランス人
スコットランド人
ドイツ人
ピースをつなぎ合わせる
第二のアイディア 科学的思考
戦争と「苦難の共有」というレトリック
第11章 人道主義のビッグバン
国際支援のプロトタイプ
災害復興のプロトタイプ
「神の怒り」から自然科学的説明へ
人道主義の世界の拡大
不可欠だった情報通信と交通の拡大
人道支援ミッションの拡大
荒涼たる大陸を救え
人道主義ミッションの止まらない拡大
始まりの終わり
第12章 第二次貧困啓蒙時代
第二次貧困啓蒙時代
無関心ではいられない
動画の力
テレビ飢饉
クールな支援(エイド)
ブームの弊害
援助疲れ
開発の再強化
善行の効率化
第13章 成果(インパクト)の時代
効果的利他主義者
慈善資本主義者
貧困科学者
効率化のエキスパート
バスローブ人道主義者
単純な話
第14章 理性が導き出す思いやりの理由
三つのRがものを言う
テクノロジー、科学、貿易がツールをもたらす
他者への思いやりの未来
謝辞
人名索引
事項索引
原注
参考文献

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