蔵書家 江戸篇 メモ

西欧において神聖ローマ帝国 マインツでヨハネス・グーテンベルクが発明した活版印刷は、1450年~1490年の40年の間に現ドイツ・フランス・イタリア・イングランド・ポーランド・ホベミアにいたるまで、200の都市に配置され普及したといわれています。しかしほどなくして、印刷技術は驚くべき速さで広まりましたが、市場はすぐさま飽和状態に陥り、印刷事業に乗り出した人々の大半が廃業を余儀なくされたそうです。

実際、グーテンベルク自身も似た事態に陥り、印刷事業の舞台から姿を消しています。グーテンベルクは活版印刷技術の発明者とも活版印刷で初めて聖書を印刷した人物と紹介されますが、その聖書の印刷に伴い膨大な資金が必要となりヨハン・スフトという出資者の協力が必要になりました。しかし後々初期費用の回収に時間がかかり出資者スフトから訴訟を起こされ、グーテンベルクは自身の印刷工房を手放す羽目に陥ってしまったと言われます。

日本においても事情は似ているようで、世界最古の印刷物と呼ばれたりする『百万塔 陀羅尼』は、770年頃に印刷が行われておりますが、仏教寺院に配布する以外に需要がなく、当時の印刷技術がこの後も普及した記録がありません。出版が商業化し読書の大衆化が始まったのは、江戸の大都市が出現する江戸時代まで待たねばなりませんでした。

この時代より蔵書家とよばれるような人々が登場してくるようになります。

 

以下に江戸の蔵書家ランキングを記して起きます(仮定)

 

1.守村次郎兵衛(もりむらじろべえ)  浅草蔵前 札差で俳人・画家 和漢の蔵書10万巻 号:十万巻楼

2.阿波国徳島藩の第11代藩主 蜂須賀 治昭(はちすか はるあき) 和漢の蔵書6万巻

3.塙 保己一(はなわ ほきいち)国学者 蔵書皇朝学の書物6万巻計り

4.屋代 弘賢(やしろ ひろかた) 江戸幕府御家人 上野不忍池のほとりに蔵書5万巻 号:不忍文庫

5.小山田与清(おやまだ ともきよ) 江戸時代後期の国学者 蔵書5万巻

6.朽木(くつき)詳細不明 西久保に住んでいた 旗下の士 兵庫(つわものぐら)の蔵書3万巻余り

7.岸本 由豆流(きしもと ゆずる) 江戸時代後期の国学者 蔵書3万巻

8.古賀 侗庵(こが どうあん) 江戸時代後期の漢学者 蔵書1万巻余り 号:万巻楼

9.狩谷 棭斎(かりや えきさい) 江戸時代後期の考証学者

10.伴信友(ばんのぶとも) 江戸後期の国学者

その他. 江戸で最も本が多く所蔵されていたところ:昌平坂学問所(神田湯島に設立された江戸幕府直轄の教学機関:湯島聖堂)


新刊書の宣伝

『日本における書籍蒐蔵の歴史』

川瀬 一馬 著 吉川弘文館

2019年7月15日 発売予定

 

中世の金沢文庫に始まり、豊臣秀次・徳川家康・近世大名や文人の収書、近代の安田文庫や好事家の収集と現代に到るその蔵書の歴史をたどる。多くのコレクションにかかわった、書誌学の第一人者による日本文化史の試み。

目次
第一部

(はじめに/金沢文庫の和漢典籍蒐集/金沢文庫散佚/関白秀次の典籍蒐集と金沢文庫/徳川家康の蒐集(駿河御文庫) 附徳川義直(尾張敬公)の蒐書/水戸光圀と前田綱紀の蒐書/脇坂安元と松平忠房の蒐書/江戸初・中期の蔵書家/江戸時代後半個人の蔵書/江戸時代後半諸侯の蔵書)

第二部

(旧安田文庫のことなど/明治時代前半の蒐書/明治三十年頃の学儒・好事家の蒐書)/附録(徳富蘇峰旧蔵『成簣堂文庫善本書目』の序文/西荘文庫旧蔵善本附記/安田文庫購入西荘善本評価書目/高木文庫譲受けの分)/掲載写真一覧/わが国における書籍蒐蔵の歴史*講義概要/川瀬一馬先生の〈幻の金沢文庫論〉…岡崎久司/索引(人名、文庫・書店名、文献名)

コメント